残クレで買った車が大雨や洪水で水没しても、残っている支払いが自動的になくなるわけではありません。
また、
「どうせ残クレだから、水没した車を返せば残価も払わなくていい」
とも限りません。
最初に分けるのは、水没の深さではなく、
保険会社や修理工場の判断で「全損」になるのか
修理できる「分損」なのか
です。
全損なら、残価を含めた現在の一括精算額と車両保険金を確認します。
分損なら、修理して残クレを続けるのか、その状態が満期時の返却条件にどう影響するのかを確認します。
水没しても自分でエンジンをかけない
残債を考える前に、水没した車を自分で再始動しないでください。
国土交通省は、浸水・冠水した車について、外観上問題がなさそうでも電気系統のショートや車両火災、感電のおそれがあるため、自分でエンジンをかけないよう注意喚起しています。
ハイブリッド車や電気自動車には高電圧のバッテリーが搭載されています。
水が引いたからといって自分で動かそうとせず、販売店や整備工場、保険会社へ連絡して搬送方法を確認します。
「水没=全損」ではない
車が水に浸かったからといって、保険上必ず全損になるわけではありません。
一般的な車両保険では、
修理できない
修理費が車両保険金額以上になる
といった場合に全損となります。
そのため同じ水没でも、
床付近まで浸水したが修理できる
エンジンや電装系まで大きく損傷し修理費が高額になった
車が流されて回収できない
では扱いが変わります。
残クレの処理を決める前に、まず保険会社の損害判定を確認してください。
全損なら残クレの残債は自動では消えない
水没して車が使えなくなっても、残クレ契約まで消えるわけではありません。
残クレには、
これから支払う毎月分
最終回に据え置かれている残価
があります。
契約途中で車を処分するなら、この残価も含めた現在の一括精算額を確認する必要があります。
トヨタファイナンスでは、契約中の車が事故全損や盗難になった場合、一括返済が必要としています。
メーカーや金融会社によって手続きは異なりますが、「車がなくなったから残価もなくなる」と考えないでください。
「設定残価」だけを払えば終わりでもない
たとえば契約書に、
最終回残価150万円
と書かれていたとします。
水没したのが契約満了直前なら、150万円が大きな判断材料になります。
しかし契約2年目など途中なら、
「150万円払えば終わる」
とは限りません。
まだ支払っていない通常月のクレジット分などを含めた、現在の正式な一括精算額があります。
したがって確認するのは、
設定残価
ではなく、
「今日の時点でこの残クレを全額精算するといくらですか」
という金額です。
販売会社または金融会社に正式な一括精算額を出してもらいます。
車両保険があれば水没が補償される場合がある
大雨、台風、洪水、高潮などによる水没は、一般的な車両保険で補償対象になります。
そのため残クレ車が水没して全損になった場合には、車両保険金を残債の精算へ充てられる場合があります。
ただし、
残債が300万円
だから、
保険金も300万円出る
という仕組みではありません。
車両保険の保険金額は、残クレの残高とは別に決められています。
そこで比べるのは、
残価を含む一括精算額
と、
実際に支払われる車両保険金
です。
保険金より残債が多ければ不足分は残る
たとえば仮に、
現在の一括精算額 280万円
車両保険金 230万円
だったとします。
保険金を全額残クレの精算へ充てられたとしても、
280万円-230万円=50万円
が不足します。
この不足分まで車両保険が自動的に追加してくれるわけではありません。
一方、新車購入時に新車特約や全損時の復旧費用を補償する特約などを付けている場合は、通常の車両保険より補償額が大きくなる可能性があります。
自分の契約で実際にいくら支払われるのかを保険会社に確認します。
洪水と津波では保険の扱いが違う
「水没」という結果が同じでも、原因によって車両保険の扱いが変わります。
台風、洪水、高潮などによる水没は、一般的な車両保険の補償対象です。
一方、地震や噴火に伴う津波による水没は、通常の車両保険では補償対象外となる商品が一般的です。
地震・噴火・津波向けの特約を付けていれば、所定の条件で定額の保険金が出る商品があります。
残クレの一括精算額は同じでも、
洪水で車両保険金が出る
津波で通常の車両保険が出ない
では自己負担額が大きく変わります。
水没した原因まで保険会社に正確に伝えてください。
全損なら「返却して残価を消す」とは考えない
残クレの通常の返却は、契約満了時に車両そのものを販売会社へ返すことで、所定の条件のもと最終回支払額を精算する仕組みです。
しかし全損では状況が違います。
車が修理不能になっている。
車が流失している。
保険会社が全損車を引き取る。
こうした場合、通常の満期返却と同じ形で車を返せない可能性があります。
JPUCも、全損認定を受け、保険会社が保険金支払いと引き換えに現車を引き揚げる場合、その車をディーラーへ返却したり、買取業者へ売却したりすることはできないと案内しています。
したがって全損では、
「返却か買い取りか」
より先に、
「金融会社との残クレをどう精算するか」
を確認します。
保険会社が車を引き取るなら勝手に廃車・売却しない
残クレ車では、車検証上の所有者が販売会社や金融会社になっていることが多くあります。
これを所有権留保といいます。
使用者だからといって、水没車を自分の判断だけで廃車業者や買取業者へ渡すことはできません。
さらに全損保険金を受け取る条件として、事故車を保険会社が引き取る場合もあります。
そのため、
廃車業者
事故車買取店
保険会社
ディーラー
の複数に同時に車を渡す約束をしないでください。
先に保険会社と残クレの契約先を確定させます。
分損なら残クレがその場で終了するとは限らない
水没したものの全損にはならず、修理可能と判断された場合は別です。
この場合、車両保険を使って修理し、そのまま残クレを支払いながら乗り続ける選択肢があります。
水没したことだけを理由に、残クレ契約が自動的に終了するわけではありません。
また、
「水没したので今すぐ車だけ返します」
としても、それだけで残債がなくなるわけではありません。
契約途中で残クレを終了するなら、中途精算や一括返済など契約上の手続きが必要です。
修理した水没車を満期で返す場合は別の査定がある
修理して乗り続け、数年後に満期返却する場合も注意が必要です。
残価保証には車両状態の条件があります。
たとえばトヨタでは、損傷または事故修復歴がないことなどを残価保証条件にしています。
ホンダも事故修復歴がある場合には、通常の傷とは別に規定の精算金が発生します。
スバルは、
事故などによる修復歴
自動車の機能損傷
がないことを引取条件にしています。
水没車では、修復歴の有無だけを見るのでは不十分です。
電装品、エンジン、内装などに機能損傷が残っていれば、返却査定へ影響する可能性があります。
具体的な水没車の査定方法はメーカー・販売会社・契約によって異なるため、修理前または修理後に販売店へ確認してください。
「修理できた=残価保証も元通り」とは限らない
水没後に高額な修理をして正常に走れるようになったとしても、
返却時の評価まで事故前と同じになる
とは限りません。
逆に、
水没したから残価がすべて失われる
とも一律には言えません。
返却時の精算は、
どこまで浸水したか
どの部分を修理・交換したか
機能損傷が残っているか
契約先の査定基準
などによって判断されます。
そのため修理費だけで、
「直す」
「全損扱いにしたい」
「返却したい」
を決めないほうがよいでしょう。
分損なら修理費と将来の返却精算を分けて考える
たとえば修理可能な水没で、
修理費 80万円
車両保険から支払われる金額 70万円
だったとします。
自己負担10万円で修理できるとしても、それだけでは残クレ全体の負担は確定しません。
満期返却時に水没・修理による査定への影響が残るなら、別途精算金が発生する可能性があります。
確認するのは、
今の修理自己負担
と、
将来の返却精算見込み
です。
販売店には、
「この内容で修理した場合、満期返却時にどの項目が査定対象になりますか」
まで確認すると判断しやすくなります。
全損なら3つの数字を同時に出す
全損と判断されたら、まず3つの金額・条件を確定します。
1つ目は、残価を含めた現在の一括精算額です。
2つ目は、車両保険から実際に支払われる金額です。
3つ目は、全損車両を最終的に誰が引き取るのかです。
この3つが分からない状態では、
返却
廃車
事故車売却
次の車への乗り換え
を決められません。
特に保険会社が車を引き取る条件なら、事故車買取価格を同時に受け取れる前提で資金計画を立てないでください。
車両保険に入っていなければ負担は大きくなる
洪水による水没が車両保険の対象でも、そもそも車両保険を付けていなければ車両保険金は出ません。
全損で残クレの一括精算が必要になれば、その資金を自分で用意する必要があります。
残クレは月々の支払いを小さくする代わりに、大きな残価が最後まで残る仕組みです。
契約の早い段階で水没・全損すると、一括精算額が高額になる可能性があります。
残クレ車ほど、水害時には車両保険の有無が残債処理へ直結します。
水没後に確認する順番
水没後は、返却できるかを最初に販売店へ聞くだけでは足りません。
まず自分でエンジンを始動せず、安全な方法で搬送します。
次に保険会社へ連絡し、
洪水など補償対象の水害か
全損か分損か
支払われる保険金はいくらか
全損車を誰が引き取るのか
を確認します。
同時に販売会社・金融会社へ、
現在の一括精算額
全損時の契約終了手続き
分損で修理した場合の残クレ継続
将来返却するときの査定への影響
を確認します。
ここまで揃ってから修理、精算、乗り換えを決めます。
水没後の分岐は「全損か分損か」
残クレの車が水没した場合、
「残価保証があるから返せば終わり」
ではありません。
全損なら、通常の満期返却ではなく、残価を含む一括精算額と保険金を中心に処理します。
保険金が一括精算額より少なければ、不足額が残る可能性があります。
保険会社が全損車を引き取れば、その車をディーラーへ返却することもできません。
一方、分損なら修理して残クレを継続できる場合があります。
その場合は、満期時の返却査定への影響を別に確認します。
水没後に最初に確認するのは「いくら残っているか」だけではなく、「この車は全損か分損か」です。
ここが決まれば、残債と返却の処理も見えてきます。
地域・契約による違い
残クレの全損・中途精算・返却条件は、メーカー、販売会社、金融会社、契約時期によって異なります。
車両保険の補償範囲や全損判定、特約についても保険会社・契約内容によって異なります。
都道府県によって残クレ精算制度が変わるわけではありません。
実際の処理では、自分の残クレ契約書と保険証券を基準に、販売会社・金融会社・保険会社の3者へ確認してください。
水没車を返却するなら、返却条件を確認します。
→ 残クレの返却条件を確認する
水没後に手放すなら、返却と売却も比較します。
→ ディーラー返却と買取店売却、どっち?
出典
国土交通省|浸水・冠水被害を受けた車両のユーザーの方へ
日本損害保険協会|自動車保険
三井住友海上|水害・水没は車両保険で補償される?洪水で浸水した場合は?
損害保険ジャパン|車両保険
トヨタファイナンス|契約中のクルマが事故全損や盗難の場合、支払はどうなりますか?
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一般社団法人日本自動車購入協会|残価設定型クレジット返済中の車で事故を起こした。高額な修理費用が発生するため手放したいが、ローンの支払いはどうなるのか。
