残クレ契約者が亡くなった|残債と車を返却・売却する手続き

残クレの契約者が亡くなっても、残っている支払いが自動的にゼロになるとは限りません。

最初に確認するのは、車を返却するか売却するかではなく、契約に団体信用生命保険や死亡時に残債が免除される特約が付いているかです。

免除の対象にならなければ、残価を含む残債も相続の対象として扱われるのが原則です。

そのうえで相続するのであれば、販売店への途中返却と第三者への売却について、実際にいくら精算が必要になるかを比較します。

ただし、相続放棄を考えている場合は、家族だけで車を返却・売却する前に相続の扱いを確認してください。

まず販売店・クレジット会社へ契約者死亡を連絡する

契約者が亡くなったら、最初に残クレを契約した販売店またはクレジット会社へ連絡します。

この段階では、

「車を返します」

「売却します」

と先に決める必要はありません。

まず、

・契約者が亡くなったこと
・現在の残債
・死亡時免除特約や保険の有無
・今後選べる手続き

を確認します。

ホンダやトヨタファイナンスでも、契約者死亡後について、早期一括返済する場合と支払いを継続する場合などに分けた専用手続きが用意されています。

つまり、死亡した時点で残クレが自動的に終了するわけではありません。

残債が自動でなくなるとは限らない

残クレ契約者が死亡した場合、残っているローンも原則として相続上の債務として扱われます。

相続では、預金や不動産などのプラスの財産だけではなく、借入金などの負債も対象になります。

したがって、

「契約者が亡くなったからローンも終わり」

とは考えないようにします。

ただし、契約に死亡時免除特約や団体信用生命保険が付いている場合は別です。

死亡時免除特約・団体信用生命保険を最初に確認する

一部の自動車ローンや残価設定型クレジットには、契約者が死亡した場合などに残債を免除する保険・特約が付いている場合があります。

対象なら、残価を含む残債の全部または一部を別の方法で処理できる可能性があります。

ただし、すべての残クレに自動的に付いているわけではありません。

契約書、申込書、オンラインの契約内容などで、

「団体信用生命保険」
「死亡時免除特約」
「残債免除」

などの記載を確認します。

分からなければ販売店またはクレジット会社へ、

「死亡によって残債が免除される保険・特約は付いていますか」

と確認してください。

特約がなければ残価を含む残債を確認する

死亡時免除の対象でなければ、次に正確な残債を確認します。

残クレでは、

これから払う月々の支払い

だけを見ると不足します。

最終回に据え置いてある「残価」も残っています。

そのため、確認するのは、

「現時点で契約を終了するための残価を含む一括精算額」

です。

単純に月額×残り回数で計算しないようにします。

相続放棄を考えているなら車を処分する前に確認する

亡くなった人に残クレ以外にも借金がある場合など、相続放棄を検討することがあります。

相続放棄は原則として、自分が相続人になったことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所で行います。

この段階では、車の売却や残債の精算を家族だけで先に進めない方が安全です。

相続財産を処分すると、相続を承認したものとして扱われる場合があるためです。

残クレでは車そのものが販売店名義の場合もあり、どの行為が相続財産の処分に当たるかは契約・名義によって違います。

相続放棄の可能性があるなら、販売店へ死亡の連絡はしつつ、

「相続放棄を検討しているので、処分手続きはまだ進めたくありません」

と伝え、必要に応じて家庭裁判所や専門家へ確認します。

車検証の「所有者」が誰か確認する

残クレ契約者が亡くなったときは、車検証の名義関係も重要です。

残クレでは一般に、

所有者=販売店・信販会社
使用者=亡くなった契約者

という形になっていることがあります。

電子車検証の場合は所有者情報が券面に表示されないため、「自動車検査証記録事項」や車検証閲覧アプリで確認します。

販売店・信販会社が所有者なら車そのものの相続名義変更とは違う

車検証上の所有者が販売店や信販会社なら、亡くなった人は登録上の所有者ではありません。

国土交通省も、第三者が車検証上の所有者である場合、その車自体について通常の所有者死亡による相続手続きは発生しないと案内しています。

つまり、

亡くなった夫
↓
妻へ車の所有者名義を相続変更
↓
売却

という通常の相続車と同じ手続きではありません。

先に残クレ契約と所有権留保を処理します。

ただし、ローン債務や契約上の権利まで相続と無関係になるという意味ではありません。

残債についてはクレジット会社と相続人側で処理する必要があります。

亡くなった本人が車検証上の所有者なら相続手続きが必要

契約によっては、車検証上の所有者が契約者本人になっている場合もあります。

その状態で所有者が亡くなったなら、車そのものも相続手続きの対象です。

普通車では、相続人へ移転登録してから使用・売却するなど、所有者死亡に伴う手続きが必要になります。

戸籍関係書類や遺産分割協議書などが必要になるケースがあります。

残クレだから一律に「販売店所有」と考えず、最初に車検証を確認してください。

車を家族が乗り続けたい場合

配偶者や子どもがその車を引き続き使いたい場合は、クレジット会社へ支払い継続が可能か確認します。

ホンダとトヨタファイナンスでは、契約者死亡後について「支払いを継続する場合」の手続きが用意されています。

ただし、

亡くなった人の残クレ契約を、そのまま家族名義へ自由に変更できる

という意味ではありません。

必要書類や今後の契約上の扱いは会社によって異なります。

「家族が車を使いたいので、契約をどう処理すればよいか」と販売店へ確認します。

車が不要なら途中返却と売却を比較する

家族が車を使わない場合は、大きく分けて、

販売店へ車を返す

または、

残債を精算して買取業者へ売る

という方法があります。

この2つを「どちらも車を手放すだけ」と考えないことが重要です。

必要になる金額が違います。

死亡したから満期時の残価でそのまま返せるとは限らない

残クレでは満期になると、一定の返却条件を満たした車について残価保証を利用できる商品があります。

しかし、契約者死亡によって契約途中で車を返す場合、通常の満期返却とは扱いが異なる可能性があります。

JPUCは、残価保証は契約満了を前提としており、中途解約時にはその保証が適用されない場合があると説明しています。

そのため、

残債200万円
契約時の残価150万円

だから、

「返却すれば150万円分は必ず消える」

とは考えられません。

途中返却時の車両査定額と、残価を含む残債を比較して精算する契約があります。

途中返却なら「あといくら払うか」を聞く

販売店へ返却する場合は、

「現在返却した場合の査定額はいくらですか」

だけではなく、

「返却後に相続人側が支払う最終精算額はいくらですか」

まで確認します。

たとえば、

残価を含む残債:200万円
途中返却時の査定額:170万円

なら、単純な差は30万円です。

実際には契約条件や手数料などで金額は変わるため、販売店から正式な精算額を出してもらいます。

買取業者へ売るなら一括精算額と査定額を比べる

販売店へ返却せず、買取業者へ売却する方法もあります。

残クレ中の車は販売店・信販会社が所有者になっている場合が多いため、残債を残したまま家族が勝手に売却することはできません。

売却する場合は、

現在の一括精算額

と、

買取査定額

を比べます。

一括精算額200万円に対して買取額220万円なら、精算後に20万円が残る可能性があります。

一括精算額200万円に対して買取額170万円なら、30万円不足します。

その不足額を誰がどのように負担するかも含めて相続手続きの中で整理します。

買取業者が残債精算を代行できる場合もある

相続人が先に現金で残債全額を払ってから売る方法しかないわけではありません。

買取業者によっては、残債照会・一括返済・所有権解除を含めて代行できる場合があります。

トヨタファイナンスにも、契約者が亡くなった場合に車両買い取り店から残債照会を行う仕組みがあります。

ただし、相続関係を証明する書類などが必要になります。

査定先には、

「残クレ契約者が亡くなっており、ローンが残っています。死亡後の残債精算と所有権解除まで対応できますか」

と最初に伝えてください。

返却と売却は金額を出してから選ぶ

契約者が亡くなった場合でも、

「ディーラーへ返した方が簡単」

「買取店の方が高い」

と先に決めない方がよいでしょう。

必要なのは、

死亡時免除後の残債
または現在の一括精算額

と、

販売店へ途中返却した場合の精算額

と、

買取業者へ売る場合の査定額

です。

この数字をそろえると、

販売店返却なら30万円必要

買取店売却なら10万円不足

といったように、実際の家族側の負担を比較できます。

相続人が複数いる場合は1人だけで処分を決めない

配偶者と子どもなど、相続人が複数いる場合もあります。

残債を誰が負担するのか、売却後の差額をどう扱うのかなど、相続人同士で整理が必要になります。

JPUCも、契約者死亡後の車の処理では、戸籍謄本や遺産分割協議書など相続に関する書類が必要になる場合があると案内しています。

クレジット会社によって必要書類は異なるため、最初から自分で大量の戸籍を取得するのではなく、

「死亡手続きに必要な書類を一覧で教えてください」

と確認すると無駄を減らせます。

相続放棄をした人は残債をそのまま払う前に確認する

相続放棄が家庭裁判所で受理されれば、その人は原則として亡くなった人の債務を相続により負担しません。

そのため、

「家族だからとりあえずローンを払っておこう」

と進める前に、自分が相続をするのか放棄するのかを確認することが重要です。

相続放棄を予定している場合は、販売店やクレジット会社にその旨を伝え、相続放棄後に必要となる書類・連絡方法を確認します。

車を手放した後は任意保険も確認する

車を返却・売却したら、自動車保険もそのままにしないようにします。

亡くなった人が任意保険の契約者や記名被保険者になっていた場合、保険会社へ死亡の連絡が必要です。

車を家族が引き継ぐなら契約者・記名被保険者などの変更、手放すなら解約や中断証明書について確認します。

残クレ処理と任意保険の手続きは別です。

最初に確認する順番

残クレ契約者が亡くなった場合は、次の順番で考えると整理しやすくなります。

まず、販売店・クレジット会社へ死亡を連絡します。

次に、死亡時免除特約や団体信用生命保険の有無を確認します。

その後、相続するのか、相続放棄を検討するのかを整理します。

相続するのであれば、車検証上の所有者と現在の一括精算額を確認します。

車が不要なら、

販売店への途中返却後の精算額

と、

買取査定額と一括精算額の差

を比較します。

ここまで数字を出してから、返却か売却かを決めます。

まとめ

残クレ契約者が亡くなっても、残債が自動的になくなるとは限りません。

最初に確認するのは、死亡時免除特約や団体信用生命保険です。

免除されなければ、残債は相続の問題になります。

また、残クレでは販売店・信販会社が車検証上の所有者になっている場合があり、この場合、車そのものの相続名義変更と残クレ契約の処理は分けて考える必要があります。

車を手放す場合も、死亡したから満期時の残価保証でそのまま返せるとは限りません。

販売店への途中返却なら返却後の精算額、買取業者への売却なら残価を含む一括精算額と査定額の差を確認します。

販売店には、

「残クレ契約者が亡くなりました。死亡時の残債免除はありますか。現在の残債と、返却・売却する場合に必要な手続きを教えてください」

と伝えるところから始めてください。

相続放棄を検討している場合は、車や契約を処分する前に、その点も必ず伝えて手続きを止めておくことが重要です。

出典

一般社団法人日本自動車購入協会|残価設定型クレジットの返済中に契約者である夫が亡くなった。車を手放したいと考えていますが、残債はどうなるのでしょうか。

一般社団法人日本自動車購入協会|ローンや残価設定型クレジット返済中の車を手放すことはできるの?

ホンダファイナンス|契約者が亡くなった場合の手続きが知りたい。

トヨタファイナンス|自動車クレジット(ローン)契約者が亡くなった場合、どのような手続きが必要ですか?

国土交通省 関東運輸局|自動車の相続による手続き

国土交通省 関東運輸局|相続による移転登録について

裁判所|裁判手続 家事事件Q&A

裁判所|相続の放棄の申述

e-Gov法令検索|民法

国税庁|相続財産から控除できる債務