残価設定型クレジット(残クレ)の途中で離婚し、車を妻・夫など相手へ渡すことは考えられます。
ただし、夫婦で「今後は相手の車にする」と決めただけで、残クレ契約や車検証の名義まで自動的に相手へ変わるわけではありません。
特に車検証上の所有者が販売店や信販会社になっている場合、残債を残したまま自分たちの判断だけで所有者を元配偶者へ変更することはできません。
最初に確認するのは、
「相手に車を使わせたい」のか、
「車も残クレも完全に相手へ移したい」のかです。
後者なら、残クレの早期一括精算と所有権解除を含めて考える必要があります。
「車を渡す」は4つに分けて考える
離婚時の「車を相手に渡したい」には、違う手続きが混ざっています。
| したいこと | 実際に変えるもの |
|---|---|
| 相手が車に乗る | 実際の利用者 |
| 車検証を相手名義にしたい | 使用者 |
| 車そのものを相手の所有にしたい | 所有者 |
| 今後の残クレも相手に払わせたい | クレジット契約者 |
この4つは同時に変更できるとは限りません。
特に残クレでは、所有者とクレジット契約者を自由に夫婦間で入れ替えることはできません。
残クレ中は相手を所有者にできない場合が多い
残クレでは、代金を支払い終えるまで販売店や信販会社が車の所有権を持つ「所有権留保」が使われることがあります。
車検証では、
所有者:販売店・信販会社
使用者:残クレ契約者
となっている状態です。
この場合、車の所有者は夫でも妻でもありません。
たとえば夫が残クレ契約者で、
「離婚後は妻の車にする」
と夫婦で決めても、販売店が所有者である以上、夫だけの判断で妻へ所有権を移すことはできません。
車そのものを相手の所有にしたい場合は、まず残クレを完済し、所有権留保を解除できる状態にするのが基本です。
車検証の使用者だけ相手へ変えられるとも限らない
「所有者は販売店のままで構わないので、使用者だけ妻へ変えたい」と考える場合もあります。
これも契約先によって制限があります。
ホンダでは、クレジット契約中の車検証の使用者を「契約外の方」に変更することはできず、家族もその中に含まれています。
離婚後の元配偶者なら、なおさら現在の契約者とは別人です。
つまり、
「夫婦だから使用者だけなら変えられる」
とは限りません。
販売店へ「離婚に伴い車検証の使用者を元配偶者へ変更できるか」と確認する必要があります。
残クレ契約をそのまま相手名義へ変えることも別問題
さらに重要なのが、残クレそのものです。
たとえば夫名義で残クレを契約している車を妻が引き取り、
「今後は妻が月々の残クレも払う」
と夫婦で決めたとします。
それだけでは残クレ契約者は妻へ変わりません。
少なくともトヨタファイナンスでは、クレジット契約者の変更はできないと明記されています。
したがって、契約者が夫のままなら、クレジット会社に対する支払義務も夫側に残ります。
妻が毎月夫へお金を渡す約束をしていても、妻からの入金が止まれば、クレジット会社との関係では夫の支払い問題です。
「相手が払う約束だから大丈夫」で車を渡すのは注意
離婚時によく問題になるのが、
車は元妻が使用
残クレは元夫名義
毎月の支払額を元妻から元夫へ振り込む
という形です。
夫婦間では合理的に見えるかもしれません。
しかし、元妻が支払いをやめても、残クレ契約者が元夫のままなら、クレジット会社への支払義務まで元妻へ移っているわけではありません。
離婚協議書などに「残クレは妻が負担する」と書くことと、クレジット会社が契約者を妻へ変更することは別です。
車を渡す側にとっては、
車は手元にない
しかしローン契約だけ自分に残っている
という状態になります。
可能なら、この状態を長期間残さない方法を検討します。
完全に相手へ渡すなら早期完済を確認する
車も残クレも整理して相手へ渡したいなら、まず販売店・信販会社へ早期一括精算額を確認します。
残クレは途中でも一括返済できる商品があります。
たとえばホンダでは、早期一括返済額を支払い、入金確認後に所有権解除書類を発行する手続きがあります。
スズキでも早期一括返済ができ、残価設定クレジットの場合は最終回の残価を含む残債を支払います。
流れとしては、
現在の早期一括精算額を確認
↓
残債を全額精算
↓
所有権解除
↓
相手への名義変更
という形を検討します。
ただし、所有権解除後にいったん契約者本人名義へするのか、相手への移転をどう行うのかは、現在の所有者である販売店・信販会社へ確認してください。
相手が自分名義で資金を用意する方法も検討できる
今の契約者に一括返済する資金がなくても、車を受け取る側が新たに自分名義でローンなどを申し込み、その資金で現在の残クレを精算する方法を検討できる場合があります。
たとえば、
夫名義の残クレを一括精算
↓
所有権解除
↓
妻名義へ車を移す
↓
妻は自分名義の新しいローンを返済
という考え方です。
ただし、妻が新しいローンを利用できるかは別途審査です。
また、残クレの精算に利用できるローン商品かどうかも金融機関によって違います。
「離婚だから残クレ契約者をそのまま妻へ変更する」のではなく、新しい資金調達で現在の契約を終わらせる方法として確認します。
早期精算額と車の査定額も確認する
離婚時に車をどちらが受け取るか決めるなら、残クレの残高だけでなく、現在の車の価値も確認しておいた方がよいでしょう。
確認するのは、
早期一括精算額
と
現在の車の査定額
です。
たとえば早期精算額が180万円、車の査定額が220万円なら、車には差額分の価値があります。
反対に早期精算額が220万円、査定額が170万円なら、車を売っても残債を全部返せない状態です。
この差額を把握してから、
どちらが車を持つのか
誰が残債を負担するのか
ほかの財産とどう調整するのか
を話し合った方が整理しやすくなります。
残クレの「残り」は月々の支払いだけではない
残クレでは最終回に大きな残価が設定されています。
たとえば月々3万円で、あと10回だから、
「残りは30万円」
とは限りません。
最終回に120万円の残価があれば、それも未精算部分です。
離婚時に車を相手へ渡すため一括返済するなら、現在の正確な早期一括精算額を販売店・クレジット会社から取得してください。
毎月の残り回数だけを見て、夫婦間の清算額を決めない方がよいでしょう。
相手へ車を渡さず売却して精算する方法もある
どちらも残クレを一括返済できない場合や、離婚後の支払いトラブルを避けたい場合は、車そのものを売却して残クレを精算する方法もあります。
現在の査定額が早期精算額以上なら、売却代金で残債を清算できる可能性があります。
査定額が残債より低ければ、不足額の支払い方法を考える必要があります。
車を相手へ渡すことだけが選択肢ではありません。
「誰かが車を引き取るより、売ってローン関係を完全に終わらせる方が離婚後の関係を残さずに済む」というケースもあります。
連帯保証人になっている場合も離婚だけでは外れない
夫婦の一方が残クレ契約者、もう一方が連帯保証人になっている場合も注意が必要です。
離婚したからといって、クレジット契約上の連帯保証人まで自動的に変更・解除されるとは考えない方がよいでしょう。
少なくともトヨタファイナンスでは、契約者の変更だけでなく、連帯保証人の解除・変更もできないと案内しています。
離婚後に相手との金融上の関係を残したくないなら、
誰が契約者か
誰が連帯保証人か
も契約書で確認します。
自分の氏名変更と「相手への名義変更」は別
離婚によって姓が変わる場合があります。
たとえば妻が残クレ契約者で、離婚によって旧姓へ戻る場合です。
これは同じ契約者本人の氏名変更です。
一方、
夫から元妻へ残クレ契約を変更する
というのは別人への契約者変更です。
「離婚による名義変更」という言葉だけで販売店へ相談すると、この2つが混ざることがあります。
販売店には、
「契約者本人の改姓なのか」
「車を元配偶者へ譲りたいのか」
を分けて伝えてください。
車だけ先に相手へ渡すなら保険なども確認する
正式な名義整理が終わる前に相手が車を使用する場合は、自動車保険も確認が必要です。
契約者、記名被保険者、運転者の範囲や年齢条件などによって、元配偶者が補償対象になるかが変わる場合があります。
離婚によって同居・別居の状態が変わることもあります。
「結婚中は補償されていたから、離婚後も同じ」と決めつけず、実際に運転する人と住所が変わることを保険会社・代理店へ伝えて確認してください。
これは残クレの名義変更とは別の手続きです。
車を相手へ渡したいならこの順番で確認する
まず電子車検証の車検証閲覧アプリなどで、現在の所有者と使用者を確認します。
次に残クレ契約書で、
契約者
連帯保証人
残価
を確認します。
そのうえで販売店・クレジット会社へ、現在の早期一括精算額を確認します。
次に車の査定額を取り、
車を相手へ残すのか
売却して清算するのか
を夫婦で決めます。
相手へ完全に譲るなら、現在の残クレをどう完済し、所有権解除後に相手へ名義変更するかを販売店へ確認します。
「相手が今後払うから、とりあえず車だけ渡す」という方法を選ぶ場合は、元の契約者に返済義務が残ることを理解したうえで判断してください。
まとめ
残クレ中に離婚しても、車を元配偶者へ渡すこと自体を夫婦で決めることはできます。
しかし、夫婦間の取り決めだけで残クレ契約者や車の所有者まで相手へ変わるわけではありません。
販売店・信販会社が所有権を留保している場合、所有権を相手へ移したいなら残クレの完済が基本になります。
車検証の使用者変更も自由とは限りません。
残クレ契約そのものについても、少なくともトヨタファイナンスでは契約者変更や連帯保証人の解除・変更はできません。
したがって、離婚後も車を相手に持たせるなら、
「相手が乗る」
だけではなく、
「残クレを誰が精算するか」
「完済後に誰の名義へするか」
まで決めてください。
最も避けたいのは、車は元配偶者が持っているのに、残クレ契約と支払責任だけ自分に残る状態を、仕組みを確認しないまま続けることです。
出典
ホンダファイナンス|普通車の早期一括返済+名義変更のお手続き
トヨタファイナンス|契約者の変更や連帯保証人の解除、変更はできますか?
